29日の出来事

29日土曜日、リラックスした1日になるはずであったが、事件は平和なレジャーセンターで起こった。いつも通り、準備運動をして筋トレに移り、ランニングを30分こなし、締めにスチームとサウナを満喫しようと思っていた。スチームルームでの出来事。

若い白人男性が入って来た。僕の隣りには黒人のおじさんが座っていた。その部屋にはその時3人いた。若い白人男性は僕の真向かいに座り、数秒してから僕に話しかけてきた。

白「 HOW ARE YOU ? / 元気かい」
黄(僕)「YEAH, I'M PRETTY WELL / うん元気だよ」
白「 REALLY RELAXING HERE / リラックスするよね」
黄「YEAH, FOR SURE / そうね、間違いないよ」
こういうロンドンのパブやら、色んなところでよくある普通の会話だった。しかししばらくすると会話の内容がプライベートな方向にズレていった。何処に住んでいるのか、年齢はいくつか、何をしているのか。そしてスチームが終わったら一緒に飲みにいこう、モバイルナンバーを交換しようと、いつの間にか話はドンドン怪しい方向に流れていった。そして彼は突然こう言い放った。
白「 I LIKE YOU / 君の事が好きだ。」
心の中で、ん、、お、きたな、こいつ、、、 G・A・Y だなと悟った。
黄「SORRY, WHAT DO YOU MEAN /ごめん、どういう意味だい?」
彼は少し躊躇しながら繰り返した、
白「I LIKE YOU / 君の事が好きなんだ。」
白「YOU'RE BEAUTIFUL / そなたは美しい」
もののけ姫を知ってんのかてめえは、と思いながら気持ちわりいなこいつと思った。そして、そうか、ヨーロッパ人の押しの強さとはこういう一切のコンテクストを無視した強引で飛躍的な関係づくりなのだと腑に落ちた。ふふ、自分の民族性からしてそんな真似は僕には到底出来ないなと納得し、何故かちょっとしたイラツキを覚え、まあ何とかなるだろなと何の根拠も無いオプティミスティックな考え方をしてしまった。一体何が目的なのか、、と恐いもの見たさもあった。
白「CAN I SIT NEXT TO YOU? / 隣りに座っていいかい?」
思えばここで無視を決め込むか、ノーというか、スチームを出て行ったらよかったのかもしれない。
黄「 I DON'T MIND / 別にいいよ」と何も考えずに言い放ってしまった。
うわ、俺の横に座ってるし不味い事になってきたなと少し後悔した。
白「DO YOU LIKE MAN ? / 男性は好きかい」
黄「NO, I DON'T / ノー、嫌いだ」
ここで僕は斜め横に座っていた黒人のおじさんに助けを求める意味で、目線をそちらへと流した。左の二の腕にド迫力のキリストの十字架の入れ墨をいれたイカツイおじさんだったので、これは助けてくれるだろうと思ったからだ。しかし彼は無反応だった。後に解った事だが彼は DEAF/聴覚障害者で耳が聞こえなかったのだ。
黄「NO, I DON'T / ノー、嫌いだ」
と再び強く否定した僕に対して彼は謝罪し始めた。
白「DID I MAKE YOU UPSET? IF I MAKE YOU UPSET, IM SORRY / 」
黄「IT'S OK BUT, THATS IT. / 別にいいけど、この先は無いよ」

そして彼はため息をついて出て行った。
彼と入れ替わりにまた別のおじさんがやってきて、しばらくして「大丈夫だったか」と声をかけてくれた。
彼は常習犯だったのだ。「大丈夫だった。ちょっと引いたよ。常習犯なんだ、それは気がつかなかったよ。危なかった。」そのおじさんから隣りの人が聴覚障害で耳が聞こえない事をしらされ3人で、ラフな手話をしながら今の一連の事件について議論した。新しく入って来たおじさんは「BTW, WHERE ARE YOU FROM ? / ところで、君はどこから?」と聞いて来たので、え、まじかまた同じ目に遭うのか、と思ったが違った。まともな会話の始まり方であった。彼はコソボ共和国出身で、日本は本当に良い国なんだろうなといった。ヨーロッパ人のいう「GOOD」よりもシリアスで、リアルな感想だった。自分の国について言われたから相手の国に関しても何か発言しなくてはいけないのかなと思ったが独立運動とか、紛争についての話は軽々しくできないのでそのまま沈黙、お互い日常的な会話をして、一連の騒動を笑いとばしてスチームをでてサウナへ。サウナにはったら、その白人のG・A・Y は服を来たまま再びスチームルームに入り、別の他人と数分大げんかをしてでていった。
「事件は会議室で起こっているんじゃない、現場で起こっているんだ。」ロンドンでのゲイ事件は頻繁に耳にするし、僕もそういう現場に何度か遭遇した事があったが、ここまでシリアスにプッシュされたのは初めてだったな。会議室で起こっている事ではなく、現場で実体験をしたので、経験値が上がった気がする。ところで彼がでていった後にイラツキを覚えたのだがそれは一体なんだったか。それは6歳も年下である22歳のケツの青い若造=G・A・Yが28歳の僕に対して「もし君をUPSETさせてしまったなら、ごめんね」と上から慰める様に言ってきて、僕は「この後大丈夫なのか」とスチームにいて汗をかいているにも関わらず、びくびくしながら背中に青白いヒ汗をかいた事に不甲斐なさを感じたからであった。
今回の経験で勉強した事、それは「暑いから汗をかいているのに、その上から更にヒ汗をかく。それはお互いに別種のものである」、「コソボの内政についてもっと知っておいた方が良い」、そして「僕は200% G・A・Yではない」ということであった。
夜19時そんな事は、一切合切忘れてT君幹事の新年会。わいわいがやがやと旨い日本食を食べまくった。Nちゃんがお母さんになるという事実が解ったのには驚いた。まだ寒い日々が続いているのでお体には大事にしてほしい。Nちゃんと別れて、レスターにてPOOL / 玉突き。25時帰宅。寝る。