ホテルを巡る旅 1/9 - CAFE ROYAL

忘れないうちに書き始めたいと思う。

CAFE ROYAL、5つ星ホテル。ピカデリー・サーカスに最近完成した表からはホテルであることは実に認識しにくい建物だ。電光掲示板が明るいピカデリー・サーカスの一角を占める三角状の区画に構える高級ホテルである。リージェンツ・ストリートにも面しているので遡れば19世紀初頭のジョン・ナッシュによる都市計画の一端を構成する建築である。1863年、フランス人のぶどう酒商人夫婦(普通に酒屋の夫婦といえばいいかもしれない)が来英したことから始まり、名のあるワイン貯蔵庫として名を馳せたとか。1890年代にはパトロンを多く保有するMEETING PLACEとして機能していたようだ。MEETING PLACEとはこれまた翻訳しにくい。「集合場所、集会場、会合場所」。いずれも高級感に乏しい役なのは気のせいか。パトロンがいるからにはそれはそれは豪華な場所だったに違いない。ちなみにパトロンにはオスカー・ワイルドヴァージニア・ウルフジョージ・バーナード・ショー、近年ではミック・ジャガーエリザベス・テーラーなどがいたそうだ。そんな人達が集まっていた場所。「サロン」とか訳せば高級感も一緒についてくるかもしれないが言葉で説明するより、百聞は一見にしかず、絵画を引用した方がよさそうだ。


WILLIAM ORPEN / THE CAFE ROYAL. From wikimedia.org より引用。

2008年にオリジナルのCAFE ROYALは閉鎖。内装や家具はオークションで売られたそうだ。建物自体はGRADE 1 LISTED、建築的に価値あるものとして公式に認定されている。DAVID CHIPPERFIELDがREFURBISHMENT/ 改装、RESTORATION / 修復を手がけ、新しく159室の部屋、歴史的スイートルームを有するラグジュアリーホテルとして2012年の12月に再びオープンした。

11時少し前にエントランスロビーに、KOMIさんと同時に到着。二人共グルリと三角形の建物を眺めながら全体を鑑賞、どこから観てもホテルだとは思えなかったので迷った。ガラスの回転扉を入り、壁面に満遍なく使用された飴色の大理石が上品である。丁寧なドアマンがロビー、レセプションを案内してくれる。Nのロゴがステンドグラスに表現されている。Nはナポレオンから引用されているそうだ。フランス人からのファウンダーだからそうなのか。12時過ぎにARYさん夫妻、TKYM氏が集まり、5人が揃う。レセプションにてショーアラウンドをお願いする。イスラム系の上品な男性が対応してくれ、案内を始めてくれる。


THE TEN ROOM. From http://www.telegraph.co.uk/foodanddrink/restaurants/9915477/Restaurant-review-Ten-Room-Cafe-Royal-London.html より引用。


THE GRILL ROOM. From http://www.hotelcaferoyal.com/ より引用

リージェンツ・ストリートに面したカフェから始まり、吹き抜けが印象的なTEN ROOM、レストランである。続いてTHE BAR、よりパブリックにオープンされているので、建物の角から、メインのホテルロビーを通らずにアクセスできる。THE GRILL ROOMは上部に貼りつけたリンクの油絵の印象そのままが保存された歴史的な空間である。腰より上は装飾的なGILT FRAMEと鏡によって演出され、腰より下は落ち着いた木のパネリングとレザー、床はヘリングボーン。鍵を解錠して入室したところを鑑みるとまだオープンしていない。室内には静かなジャズ・ミュージックが流れているがスピーカは目に見えない。どうやら全てPLASTER-INで装飾の裏にCONCEALEDされている。「あそこにチャーチルが座っていたんですよ」というコメントが歴史的な想像を掻き立てる。

古式風のエレベーターに乗って上階へ。POMPADOUR SUITEへ。立ちで200名、椅子ありではは110名が収納できるというこれも装飾が美しい歴史的な空間が保存・改修されたもの。WIFIは勿論の頃、あらゆるAV装置が内蔵されているそうだ。DJをよんで騒ぐダンスパーティから、シリアスなビジネス・ミーティングまで何にでも対応できる。「いつでもお貸しできますよ」とおすすめされるので、是非SHARIで使ってみてはどうか。

更に上階へあがり今度は客室へ。典型的なダブルベッドルームへ。共用廊下は木のパネリング。吸音材が入っているためか個室にいるような感覚だ。証明は間接照明でパネリングの背後や、上・下部、吊り天井のパネリング裏にセッティングされている。銅かそれに似たマテリアルでできた障子のようなスクリーンが和テイストを演出している。


HOTEL ROOM IN CAFE ROYAL. From http://www.hotelcaferoyal.com/gallery/rooms/ より引用。


BATHROOM、CARACATTA BIANCOの量が想像できるだろうか。 From http://www.hotelcaferoyal.com/gallery/rooms/ より引用


VIEW FROM THE ROOM. From http://www.hotelcaferoyal.com/gallery/location/より引用。インテリア側にもう1枚窓が用意されているので、外部からの音は一切聞こえない。無音のピカデリー・サーカスを眺めるのは不思議な体験だった。

室内。バスルームをみて使用されている大理石の量を察知して驚く。バスタブはブロックから削りだされたもの。壁のクラディングですら、斜角を付けられたエッジを見ると厚さが一目瞭然。分厚い。天井以外全て大理石、スペックは霜降り模様からCARACATTA BIANCOと察する。コミさんの事務所でこの大理石を使おうと企てているらしいが、品薄状態が続いて納期がいつかわからないそうだ。きっとこっちにそれらが流れていったのだろうとKOMIさんが察する。室内の照明、空調・温度管理、DO NOT DISTURBサインなど、あらゆる事がデジタル化され、インテリアに内蔵されていた。

ベッドにはマットレスだけが乗っている。そう、実はまだこのホテル完成してはいないのだ。所謂プレオープンというやつで、全体の80%くらいしか起動してなさそうだ。これからまだオープンする階、部屋があるようでそれらが完成しようやくフルオープンになるのだ。写真はまだ撮ってはいけない、というのでいろんな情報を身体で覚えようとする。音やら香り、明暗、触感やら。

まだ未完成ということで、プールは残念ながら見学できず。しかし色々と案内してくれて勉強になった。お礼をいってロビーを出る。9つの内の最初の1つでこの濃度、さて残り8つは乗り越えられるのか。