アナログ・パラメトリック設計で疲れる

3月18日、月曜日。

7時過ぎ起床、9時半事務所。11時半過ぎに現場に到着。先に打ち合わせをしていたSNとクライアントに合流。図面を見せ更に詳細の打ち合わせ。クライアントミーティングの後にはメカニカルエンジニアのWNと現場監督のBRNDとSNと僕で軽くミーティング。ふう、疲れた。
タクシーでSNとピカデリーへ。SNはピカデリーのセビル・ローで引き続き別件で打ち合わせ。僕はCHACHA MOONでランチを食べて事務所へ帰る。19時半まで仕事。

チェルシーの住宅は最終段階に差し掛かっている。RIBAの規定するステージではSTAGE Kの後半に位置している。とはいってもあと数ヶ月は残っているし、現場もまだまだ終わりそうにない。デザインに関してもまだまだ詰める部分があり、変更される箇所も沢山出てきている。STAGE KにいてもSTAGE DやEに逆戻りしデザインを見直しては、製品のスペックを改め、手早くQUOTATION / 見積もりを仕上げて猛スピードで追いかけるような事も多い。そういう往復はあるものの、デザインの最終段階は床、壁などの仕上げの割付である。ここまでくれば後は楽に処理できるものだとばっかり思っていたけれども、ここには凄まじい労力が必要である事を最近身にしみてわかっている。

今苦しんでいるのは大理石などのタイリングである。特にVICTORIAN TILE / ビクトリアン・タイルとなるとコンピュータの力を借りずには実現できない。限定された空間がありその中で規格化されたタイルフォーマットの幾つか選び、それらを組み合わせ、部屋の寸法にぴったりと合致したレイアウトを探しださなければならない。ただ単に矩形のタイルを使うのであれば特に問題なし。センターラインを押さえそこから放射状に広がるようにレイアウトして、部屋のリミットが来たところで切断してしまえば妥当なレイアウトになる。しかし複雑な幾何学になりボーダーが必要になったりするとバリエーションが爆発的に広がってしまう。昔の人は良くこういう決定を手計算で導き出せたものだなと感心しながらやっている。

ヨーロッパの建築は基本的に小さな物の単位の繰り返しで構成されている。レンガ(215x102.5x65mm)がその代表格であり、石の組積、内装においてはタイリング、パネリング、寄木細工、大理石のブックマッチング、コーニスなどの装飾。窓の配置とその反復、これらの大半がモジュール化されており、体系化されることによって空間が構成されている。ただ、タイリングのモジュールが、必ずしも主構造のモジュールと合致するかといったら、そうはいかない。必ず、ずれが生じる。厚みや誤差の無い純粋に数学だけで築き上がられた建築があるとしたら、存在するのだろうけど、物質には寸法H x W x Dがあるからいざ1つの建築に色んなモジュールによって体系化されたものがひとまとまりになった時には、それらは衝突し合う。苦戦しているタイリングもまたその1つなのだ。複雑な幾何学を規定された空間に収めるにはどうしたらいいか。多分最近流行りのパラメトリックな手法でデザインができたら一瞬で解決するのかもしれない。

近年ヨーロッパの建築デザインの世界で主流となっているパラメトリックデザインは形態操作のために使われてる事が多いと思うが、そういう考え方の起源は一体どこにあるのかなとCAD上でタイルのモジュールを変えたり、あるいは7x5のレイアウトを8x6にしてみたらどうか、更には三角ピースや薄いボーダータイル、度を超えると2mmのTILE GROUT / 目地埋めも考慮したりしながら考えたりする。コンピューターの頭脳の飛躍やソフトの利便性、機能性の向上はパラメトリックの手法が流布した要因だと思うが、パソコンがなくても可能なことだし、起源ではなさそうだ。ではいつどこからはじまったのかと過去に遡ってみようとしたけれども、考えてみればヨーロッパの建築は先ほども述べたように、レンガや石などの単一のものが体系化され、更にそれらは柱やボールトを構成したりして大きな単位として反復されより大きな空間を定義していける。で、僕のやってるタイルや寄木細工とかもその延長上にあるとするならばヨーロッパの建築は昔から変わらずパラメトリック設計なのだなと勝手に納得する。特に考え方としては新しいわけでは無さそうだ。ずっと以前からパラメトリック設計をやっていたのだ。

ステマティックだなあと思うものの、これをアナログにやるとなると辛い。RHINO + GRASSHOPPER入門でもしようかなと思いながら、手計算でベストな割付を発見した時には思わず、やった、、発見したと感動できた。


ヴィクトリアンタイルのレイアウトは例えばこんなの。