ROME COLOSSEUM / ローマ・コロッセウム

これほど巨大な廃墟は初めて見た。アーチをくぐり楕円形の回廊を歩き、エキシビションをざっくりと見た。猛獣が闘技場の床から現れるためのからくり、職業としてのグラディエーター、建築図面など興味深いものが並ぶ。他には当時の社会背景や文化的意味などのパネルをさらっと読んで、内部へ。階段状の客席とお椀型の空洞には、当時の公開処刑、海戦のモック、観客の歓声を想像し、景色をリコンストラクトするのに十分な記憶の断片が残されていた。客席、階段、床、、なにかしらから漂ってくる。ブリックの蹴上げが高く、ローマ人の足腰と体格の違いを体感したような感じだった。英国のブリックよりも細く長い、エレガントな印象を与えるプロポーションであった。
建設は西暦70年辺りから始まり、たった10年程で完成した。エジプトのピラミッドと同様、想像を超える労働力が浪費されたのだろう。ローマ帝国には250以上の円形劇場があり、その時代においてコロッセウムの建設は政治的意思表明であり、文化のシンボルであった。ボールトとアーチ、ブリック仕上げのコンクリートがこの巨大な構造物を実現するための技術的バックボーンとなった。略奪、火事、地震によって今では全形を停めてはいないが、廃墟にはここ2000年の記憶が十分に保存されているようだった。