8月19日、月曜日。
今日でドウロ川沿いのアパートメントはチェックアウト。ホテルではないのである程度の掃除・整理整頓をして、オーナーから言われた確認事項を確認し、鍵を室内に置いてオートロックの鍵を閉めテキストを送る。10時頃出発。
レンタカーのHERTZまで荷物を持って歩いていく。途中カフェで簡単な朝食。コーヒーが美味しい。HERTZには11時頃到着。予約していたとおりVWのPOLOをレント。保険のオプションなど細かいことを話しながら決定していく。日本でいうETCも搭載しており格安なのでそのオプションもいれてもらう。ただ左ハンドル、マニュアル・トランスミッションなので緊張。ここはKUBO-Cに任せた。何故ならKUBO-Cはイタリアで3ヶ月生活し、左ハンドル・マニュアルに慣れているからである。助手席にはTKYM氏が座りiPadに記録したルート検索を伝える役目を担う。
高速道路に乗って西東へ向かう。向かうはポルトから西東へ直線距離にして約40キロに位置する丘の街、MARCO DE CANAVESESである。ALVARO SIZAの初期の作品であるCHURCH OF MARCO DE CANAVESES(1996年)がある。KUBO-Cのドライブは順調に進む。道中、ところどころで山火事が原因なのか山からモクモクと煙があがっていたり、大きなバケツを吊り下げたヘリコプターが低空飛行していたりしてたのを観た以外、のどかな風景が続いた。(後にポルトガル北部の山火事が大きなニュースになる)
昼過ぎに丘の上の小さな街MARCO DE CANAVESESに到着。駐車場に車を停めて車外に出る。雲ひとつとない快晴、白い建築が映える。ただ焼ける日差しで暑い。教会は道路に面した小高い場所に位置し、街の象徴になっている。階段を登り切ると山の稜線が一望できる広場に行き着く。その広場を中心に、片方には教会があり、もう片方には既存の街並みのスケールに合わせて設計した複合施設のようなものがある。集会場や、小さなオフィス、カフェ・バーのような感じだった。
外観を色んな所から眺める。各所にヨゴレが目立つが昨日観た建築学科棟と比べて陰気さがない。爽やかなヨゴレ方。景色と天気のお陰かもしれない。シーザの建築で印象的なのはスカーティング。腰より高い位置のスカーティングは地面の色合いとマッチさせられており、あたかもそこから生えてきたようにみえる。地面から生えてきた、そんな印象。
それにしても人がいない。周辺の建物の窓のシャッターも大半が降ろされている。シエスタの時間だからみな昼寝でもしているのだろう。教会も閉まっている。昼ごはんを食べようと小さなレストランに入る。切り盛りしている女性がいて少しだけ英語が話せた。昼のランチメニューは魚か豚の2つの様なので、皆豚にする。豚のロースト、ジャガイモ、インゲン豆のような野菜を茹でたもの。シンプルな料理だったがとても美味しかった。ジャガイモはホクホクしてそれ自体で甘くいくつでも食べられた。豚は臭みがなく柔らかくてジューシー。野菜も瑞々しく美味しかった。これで1人6€。安い。満足のランチだった。
昼食後散歩をして、教会に戻った頃にはシエスタが終わり内観できた。正面の大きな扉は閉ざされたまま。横側の小さな入り口が開けられ、内部の白い空間へ。静寂そのもの。水が湧き出る音が堂内に微かに聞こえるだけ。シーザデザインの椅子に座るとちょうど横長の窓からは山の稜線が眼に入るような設計になっている。床から450mmまでは木の幅木、その上にはツライチで5列の白いハンドメイドタイル、高さは750mm、1枚150mmの計算。着席して約1500mmの位置が目線の高さとなっていた。この窓の位置(特に窓敷居の位置)は外観から確認するとちょうど大理石のスカーティングの上端と合致している。
教会を観に来ている人は僕達3人のみ。時々、街のおばさんが見に来て僕達が愚行を起こさないようにさらっと監視している。ALTAR / 祭壇を正面に見て左側の壁は大きく湾曲しており、そこに同じ大きさのマドが3つ開けられている。外観から見ると1つの大きな横長窓である。そこから天井を舐めるようにして光が入ってきている。
家具もおそらくすべてシーザのデザイン。1996年以降使われていると仮定すると、20年近く使われている家具。いい色味、擦り切れ具合をしていた。
スケッチもした。外観2枚、内観1枚。旅の楽しみの1つである。