STRAWBERRY HILL HOUSE / ストロベリー・ヒル・ハウス

午前8時頃目が覚め、9時過ぎに起床。朝食を食べフラット全体の掃除をした後にフラットを出発。徒歩で最寄りのオーバーグラウンドの駅に向かいRICHMOND行きの電車に乗車。電車の中で鈴木博之先生の「建築の世紀末」、第2章の「ストロウベリ・ヒル・ゴシック」を読む。本日はそう、HORACE WALPOLE / ホレス・ウォルポールのSTRAWBERRY HILL HOUSEを見学しに行くことにしたのだ。三連休、何もせずに過ごすのは勿体ないなと思い、昨晩の夜に計画、今朝天気が良かったので決行した。

電車にしばらく揺られること約1時間、RICHIMONDに到着。車輌は沢山の人でごった返していたが、KEW GARDENの駅になると殆どの人が下車した。RICHIMONDからはバスに乗ってTWICKENHAMのSTRAWBERRY VALEまで。WILLIAM MORRISのレッドハウス同様、周りは住宅街に囲まれているが郊外の寂しげな印象はなく自然豊かな高級住宅地の印象が強い。こんな所に住めたらの理想的な場所である。バス停から徒歩1分でSTRAWBERRY HILL HOUSEのゲートに到着。訪問客はほとんどいない。鳥のさえずりとヒースロー空港に着陸する低空飛行する飛行機のエンジン音が聞こえる以外は静寂そのもの。飛行機が好きなので僕はちっとも気にならない。

6ポンドの入場料を払って14時20分からのガイドに参加。入り口の前でまず簡単な概要を女性ガイドが説明してくれた。簡単に説明するとSTRAWBERRY HILL HOUSEは政治家、物書き、収集家HORACE WALPOLEが1748年から1790年までの長い年月をかけて増築・改築を継続し続けた彼の「風変わり / ODD」な住宅である。ストロウベリ・ヒル・ゴシックといわれ、またゴシック・リヴァイヴァルのスタイルを確立したといわれる初期の作品例である。ロバート・アダムをはじめとした複数の建築家を集め、COMMITTEE OF TASTE、(何と訳せばよいかだろうか、、趣味の委員会だろうか)を結成し、デザインを議論し実現していったようだ。

建物に入るとそれぞれの部屋にはガイドのおばあちゃんやおじいちゃん(ボランティアの方々だろう、NATIONAL TRUSTかENGLISH HERITAGEのバッジをされていた)がいて、丁寧にその部屋の概要から隅々のディテールまで説明してくれる。興味深かかったのは、ウォルポールは本に載っているゴシック建築のイラストなど(正式な出典元があるもの)から様々なディテールを選んで彼の目的の為に順応させていったということである。彼自身、そして趣味の委員会メンバーのアプローチも全く学術的ではなかった。彼曰く、「MORE THE WORKS OF FANCY THAN OF IMITATION / 模倣ではなく、空想である」。だからそれがどんなマテリアルで、どのような工法で制作されたかなどは一切無視し、ゴシックの雰囲気を作り出すことだけに力が注がれた。さて、、、更なる詳細は僕がヘタな説明するよりも鈴木博之先生の「建築の世紀末」を参照されることをおすすめします。さてここからは本日撮影した写真を。

バス停に到着してからすぐSTRAWBERRY HILL HOUSEをみつける。

庭から全体を眺める。

ホール・階段に入る。文献に載っているエッチングで描かれた階段室と同じだという感動。壁面に見える装飾はペイント。

吹き抜け


大パーラーのストロベリー・ヒル・チェアーと、、、

大パーラーの暖炉。石と見せかけて、勿論木材。

吹き抜け2

壁はこんな感じ。

青の寝室。ホレス・ウォルポールの寝室。ガイドのおばあちゃんいわく、、この窓は景色を切り取るために、スライディング窓なんだよとのこと。え、これスライディングするのか。

窓の前にスライディングするパネルがあるのはわかるが、実際の窓も横方向に開閉できるらしい。あるいはオリジナルはできたのかもしれない。

ガイドのおばあちゃんいわく、この家よりもさらに50年古いロック。

読書室。

開閉部分。

ステンドグラス。描かれた図像・図柄はウォルポールに縁のある人々。

ギャラリー。今でこそ壺や絵画がなどの展示物が少なくスッキリとした空間になっているが、エッチングを見てみるとジョン・ソーン邸宅のように色んなコレクションで埋まっている。


同じアングルで。Reference from http://austenonly.com/2010/04/30/horace-walpole-and-strawberry-hill-at-the-va-the-father-of-gothick-literature-and-much-more/ より引用。

これが石でできているのか、紙みたいなものでできているのか、分からない。ウォルポールにとっては重要なことではない。

TRIBUNEという部屋。コレクションの中でも最も貴重な物を展示していた部屋。鉄格子の扉が設置され、特别優待された人のみ入れたそうだ。

そのTRIBUNEの天窓と金のオーナメント。

丸い応接室のステンドグラス。

丸い応接室の暖炉。

丸い応接室の隠し扉のディテール。

ボウクレルクの小部屋の天井装飾。

From 140504 Strawberry Hill House
建物の外に出て散策。庭はST. MARY'S UNIVERSITYのキャンパスと続いている。

大学キャンパス内にひっそりと佇むPORTLAND STONEのファサードを持つチャペル。駐車場の裏側にあり、誰も見に来ない。

芝生に座り込んでのスケッチ。

煙突・BATTLEMENT / 胸壁のディテール

ファサード

BLUE PLAQUE。MAN OF LETTERSとは「作家」と訳す。

帰り際に表から。

「建築の世紀末」、第2章の「ストロウベリ・ヒル・ゴシック」の冒頭で新古典主義の時代における建築家と遺跡との間に二千年近い歳月が横たわり、建築家はその長い時代を遡る旅をしたと書かれてあった。ホレス・ウォルポールもまたグランド・ツアーや書物を通して思いを馳せ、この風変わりな家を築き上げた。僕自身が今270年前に建ったこのストロベリー・ヒル・ハウスを眺めて思うべきことはなにか。実際に見てガイドの話を聞きスケッチもしていろんな事を考えたが、なかなか集約しそうにない。理想郷=アルカディアを追い求めたとはどういうことか。『「ロマン的古典主義」の本質は、理想郷に思いをはせること』だとあったが、ナショナル・ギャラリーでニコラス・プッサンの絵画を観ながら、近景には大蛇に殺され青ざめた人間が描かれ、遠くに美しいアルカディアの風景が描かれているのを何度か鑑賞したことはあるが、現代におけるアルカディアは何だろうか。というかそういう理想郷を考える事自体怪しいのかな。

カフェのお姉ちゃんにオススメされたソーセージのスープ的な物を食べながら景色を眺める。芝生に座り込んでのスケッチもはかどった。BATTLEMENT / 銃眼付き胸壁のディテールや建物の全体像、寝てる人、座っている人、窓など色々とスケッチ。

十七時過ぎゆっくりと散策して楽しい時間を過ごせた。バスでRICHMONDまで戻り、オーバーグラウンドに乗って最寄り駅まで帰る。フラットに戻る前に少しだけ食材を調達し帰宅。鶏とキノコの炊き込みご飯とほうれん草となすの味噌汁を作りおかずなしの軽めの夕食。夜は写真を整理したり、ブログ記事を更新。