BENJAMIN FRANKLIN HOUSE / ベンジャミン・フランクリン邸

BANK OF ENGLANDを見終わった後にフラフラとテムズ川を渡ってバラ・マーケットにてダックサンドイッチとカスタードドーナツを食べながら太陽に当たる。朝の寒さはどこへ行ったやら、、暑い。シャードの根元にあるイタリアンカフェみたいなところでコーヒーを飲みながら昼以降の行動を考える。OPEN HOUSEのイベント地図を見ながら興味深そうなものを見てみる。するとCHARING CROSS駅からすぐのところに何やら住宅が開放されている様子だったので、思い切って行って見ることにした。チューブを乗り継いでWATERLOOまでいって再びテムズを渡る。

GRADE 1 LISTED / 第1級指定建造物に区分されるGEORGIAN HOUSE。ベンジャミン・フランクリン。米国の100ドル紙幣に描かれている人物だ。政治家、外交官、著述家、物理学者、気象学者、発明家、印刷業者と、かなりたくさんの肩書きを持ち幅広く活躍した人物だ。彼がアメリカ独立戦争の直前まで彼が16年間過ごした家。1757年から1775年までの間は事実上のアメリカ大使館として機能した。


外観から鉄のBALUSTRADEのディテールを眺める。

ベンジャミン・フランクリン邸における保存事業はある原理に従っているとして以下の4項目が挙げられている。「Minimise the extent of repair work」、「Retain original material wherever possible」、「Use traditional methods and materials wherever possible」、「Provide long-term rather than ad hoc repairs」。訳してみると「修復作業を最小限に抑えること」、「オリジナルのマテリアルをなるべく残すこと」、「伝統的手法とマテリアルをなるべく使用すること」、「一時的ではなく、長期的な修復を提供すること」。最後の原則は少々曖昧な翻訳になってしまっている。その場しのぎの修復ではなく、長期に渡って安定した状態を保てるような修復をすること、だと個人的に思っている。

10人程度の人が並んでおり、多くはアメリカ人だった。事前予約が必要であるらしかったが、人数的に問題ないので30分ほど並んでガイドツアーに参加させてもらった。ガイドしてくれた若い女性もアメリカ英語だった。まず地下のセミナーハウスに案内され概要を聞く。展示品の中に人間の頭蓋骨や骨が展示されている。この部屋は元々庭のレベルで発掘調査から幾つかの人骨が発見された。というのはもともと解剖学校がここで運営されていたからだそうだ。

地下の階から上部までをざっと案内してくれた。小さい住宅だった。フロアボード、パネリング、シャッター、暖炉、階段など多くの物が18世紀からのオリジナルである。1998年に構造修復工事が行われ鉄骨の補強がされたらしいが、どこの床も平らではなく部屋の中心から双方に傾いている。真ん中に図太いビームが飛んでおり、双方の壁が基礎から沈んだ結果の歪みだそうだ。ドアもパネルもオリジナルだというから長年かけてゆっくりと歪曲が進んだのだ。


自然光と人工照明。天井にライトが設置されている。

残念だったのはおそらく近年設置されたライティングだ。オリジナルのライティングはもちろん自然光とキャンドルだ。天井・壁・床すべてオリジナルなので、せめて日中は暗い状態を保って18世紀当時のライティングを再現したらいいものの、チープなライトであらゆるところを照らし出して、下品ささえ感じる。安全性や法規故に必要になるのだとは思うが、もう少し別の方法があったのではなかろうか。唯一暗い部屋で撮ったフロアボードの写真は、部屋にサッシュ窓からの自然光のみでよかった。


自然光のみ