ギリシャ紀行:6日目 最終日

9月2日、金曜日の事。

楽しく忙しかったギリシャ紀行も今日で寂しいけれどもこれでおしまい。夜21時の飛行機に乗らなければならない。今日もたっぷり太陽の日を浴びてロンドンに帰りたいと窓の外の快晴を確認して思う。ロビー横でいつもの朝食。荷物を詰め込んでチェックアウト、そのまま荷物をカウンターに預けて外出。


ホテルの窓から廃屋を覗き込む

アクロポリスの長い外周を市内観光しながらゆっくりまわる。遺跡が入り込まない風景を歩き、途中、ゼウス神殿やアドリアヌス門によったりした。ゼウス神殿が巨大で圧倒される。こんな巨大な柱が104本も立っていたのだそうだ。今はほぼ消失して十数本あまりだけ残っている。遠く離れて巨大な全体像をながめたり、近寄って詳細を覗き込んだりする。


今まで書かなかったけれどもそういえば蝉の声がいつも背景に入っている事を想像していただきたい。

とりあえず観なければならないところは観た。しかしまだアクロポリスの南側の裾に広がる遺跡のアディコス音楽堂とディオニソス劇場には行っていなかったので先日のチケットを持って訪れた。日の角度からか風景がいつもより白く目映い。サングラスなしだときつい。高低差の激しい遺跡をひたすら歩き、見晴らしの良い岩の上で休憩。休憩するも直ぐさま木陰が必要な事に気がつき再び歩く。最後には長い階段にたくさんのタベルナが並んだ通りに迷い込みその1つに落ち着いた。昼時だしちょうど良かった。まだ時間帯が早いからかテーブルには誰も座っていない。。

[:W640]

ファンタとグリークサラダとパンで昼食。静かな通りに面したテーブルに座ってゆっくりと過ごした。平らでない敷石にラフにレイアウトされたテーブルとイス、屋根は葡萄棚。バックグラウンドミュージックは特になし、タベルナオーナーのおじさん達の会話と、鳥のさえずりくらい。その場でかなりの時間を費やした。ギリシャ観光の最後のひとときである。

さて、そろそろ空港に向けて出発しなくてはと重い腰を上げてホテルに戻る。荷物をピックアップしてシンタグマ駅横のバス停に行く。今日は運悪く地下鉄のストライキだったので地下鉄が動いていなかったのだ。X95に乗車し1時間ちょっとで空港に到着。チェックイン無しでパスポートコントロールを通り、お土産などをみる。待ち合い室で乾いた風景と飛行機を眺めながら出発を待つ。ANGやELEFから電話が入り何事もなく空港にたどり着いた事を伝え、お世話になったお礼を言う。21時搭乗、離陸。いつの間にか眠りにつく。気がつけばLONDON GATWICKに到着。GATWICK EXPRESSにのってVICTORIAまで、。VICTORIAからはタクシーでフラットまでもどった。とりあえずベッドに倒れ込んだ。

あっという間の6日間はこのようにして幕を閉じました。大怪我や盗難なく無事に帰って来られてよかった。ギリシャ紀行はこれでおしまいです。





後記:

ギリシャはご存知の通り財政不安に陥り、EUから融資を受けて財政再建を試みている最中である。勿論ギリシャがそういう事態であるのは承知の上で今回の旅行を計画していた。ギリシャ人の友達がたくさんいるし皆アテネに住んでいる。皆に事前に国内の状況を聞いてみたけれど、危ないところに行かなければ大丈夫だという反応が返って来た。アテネはともかく、サントリーニ島などは全く問題ないとどこからともなく情報が入って来た。それに外務省ホームページでも確認してみると、観光は特に問題なしと記されていた。

6日間毎日快晴で僕の気持ちは太陽と共に晴れやかだし、僕だけでなくギリシャに住む人達も皆笑顔溢れ楽しそうな人生を送っている様にみえた。しかしブログでは触れなかったけれどもギリシャの暗い側面も垣間見える旅であった。多くの店がシャッターを閉じ、街にはグラフィティーが溢れ、ガラスが割れた建物や廃れた通りがたくさん目にした。放火された様なキオスクも見かけた。建築デザインをする友達はみな自国が置かれた状況に不安を抱えていた。いつ仕事を無くすか解らない、2ヶ月間給料をもらっていない、明日給料を回収する為に(ボスと)戦ってくる。そういう状況だった。みな挫けず頑張っているのを知った。僕なんかは貯金なんて無いに等しい、しかし少なくとも働けているし、給料をもらえている。それだけでもまあ幸せか、、、と片隅で思う。

遺跡を眺めていると太古の活気溢れる都市が頭に思い描かれる。栄えていた街や都市がいつの間にやらこのような遺跡と化しその上に新しい都市が建設される。それはいつかまた朽ち果てる。世紀単位での話だがその繰り返しだ。「こんな状況だけど、なんとかななるだろう」と遺跡を前にして言われると、彼らの楽観性は身体にそういう時間感覚が先天的に組み込まれているからかもしれないとか思う。「なんでDELPHIなんかにいくの?」という質問から私達にはそんな時間的感覚が内蔵されていますよと宣言しているのは明らかだ。古代の聖域だぞ、それは毎週見に行ってもいいくらいだ。

僕なんか明日、週末、来月、先の事でも半年くらい先の事くらいしか考えられていない。数十年先、数世紀先の事なんてのは恐れ多い。しかし建築家としてはそれはいけないなと反省する。数世紀残る建築はつくってみたい、、僕も事務所で設計・修復を手伝っているあのゴシック・リバイバルの様な建築、、今回沢山観てきた重く、古く、崇高な、、それぐらいその場所でRIGID / 頑にとどまり続ける建築を。


頑張れギリシャ