オクスフォードへ

土曜日の天気を知らせるニュース、そのタイトルは「UK facing 'worst storm of year'」だった。つまり外出するには最悪の天候という事だ。滅多にロンドンをでない僕が決心してオックスフォードに決めたのにこの有様。しかしなにをいっても仕方ない。

9時50分、パディントン発の列車で1時間、嵐であったり、突如晴れ渡ったりの田園風景を眺めながらオクスフォードへ。T君お迎えにきてくれる。いままでガイドする方が圧倒的に多かったが、今回は案内してくれる立場にいるので、楽。オクスフォードの町並みを眺めマーケットや教会、そして大学図書館など、彼がいないと入れない箇所を色々と観光できた。

黄色みを帯びた石はコッツウェルズストーンなのかな。

今回の訪問で僕にとって一番良かったのが、アルネ・ヤコブセンの建築に入れた事だ。実はヤコブセン設計のセント・キャサリン・カレッジの寮にT君は入っているのだ。ヤコブセンに関して、特に建築に関しては僕は疎かった。エッグ・チェアやセブン・チェア等の家具やプロダクト系のデザインの方が印象が強かったからだ。今回初めて彼の建築を体験できた事、とても貴重だった。


学生のダイニングルーム


図書館

ミースに(特にIITの建築)強く影響を受けたと本人が言うように、また1960年代あたりにデンマークでは日本建築が多くに影響を与えたように(文献によるとそうらしい)、随所にその片鱗が観られる。マスタープランは非常にミースのIITに近い。見比べてみたら一目瞭然だ。それぞれの建築自体も同様。ミースの柱梁の構造と、UKらしいレンガの壁構造が組み合わされ、その隙間から内部に落ち着いた光が入ってくる。図書館は特にその大枠とヤコブセンの照明とチェアが抜群に相性が良かった。非常に心地よく静かで、まさに図書館の空間としては最適だった。室外機の音など集中力を欠く雑音は一切しなかった。ワースト・ストーム・オブザイヤーな嵐なだけに強風が建物をなでる音くらいしかしなかった。この音が実は心地よい。グラウンド、ファーストフロア分を吹き抜けにしている中心の空間は、失敗した吹き抜け空間のなんというか独特のそわそわした感覚がしなかった。写真から解るように照明が上から吊り下げられそこがどうやら個室的な雰囲気を醸し出していてとてもよかった。そしてそこに座っているのはT君です。僕がヤコブセンのこの建築に関する資料を発見し、学生時代に戻った時のようにコピー機で複製した。その間、時間をそこでつぶしてもらっていた。

ヤコブセンの大きなスケールを体験した後は、T君の部屋、つまり住空間へ。いい意味で贅沢の無い学生寮だった。簡素で余計なものがない。ドアノブはおそらくヤコブセンのものだ。グリップがしっくりきた。


寮に沿う形で張られている池もよかった。

ランチは奮発する予定だった。1660年から続くとても小さな老舗ホテルのレストラン。知らないとおそらく前を歩いても気がつかないだろう。フジが建物に全体に巻き付いていて、いかにも年月を感じさせる。ミシュランガイドにものっている様で入るのに2人どきどきしてしまった。案の定ある程度の年齢の方達が多く、僕らみたいなのはほとんどいなかった。そしてメニューをみて何を注文するかじっくりと考えた。そして何という事か、こうなったら一番のメインをとろうとなって、いちばん値のはるリブステーキを頼んでしまった。そのせいで格別に美味だった。。。よくあるバターを大量に使い大味にした肉とはまったく違った。驚く事に醤油と大根おろしで食べている、そんなさっぱりした感じだった。というかソースの味が大根おろし醤油とかなり近かった。いったいなんのソースだったんだろうか。肉の脂身もまったく気にならない。脂身は食べたら口の中で溶けていった。付け合わせのポテトのグラタン(だとおもう)はミルフィーユの様にマッシュされたポテトと生地が何層にもな重なっていて、マッシュポテトのクリーミーな感じと、生地のぱりぱり感の相性が抜群だった。ヤコブセンのミース風、クリスプな構造とヤコブセン独特のソフトな家具との調和のような。(くさい言い方だ)


満足して最後のT君がいつも勉強している図書館へ。ヤコブセンのものとはちがい大学オリジナルの図書館で荘厳だった。UCLの図書館もよかったが、ここはもう1つ年季が入っている。全体を埋めるのはルイス・キャロルの初版でもはいっているような本棚だ。

以上が土曜日の日帰り旅行でした。T君の案内のお陰で色んな体験ができた。この場を借りてお礼を言いたい。でもまだまだいかなければならないところが発見できた。まず観光名所をまわらなかったからだ。それに美味しそうなレストランをいくつか発見してしまったから。これから何度か通いたいと思う。今年最悪の天候でも、運がよく雨がずっと降り続いている訳ではなかった。今度こそは雲一つない快晴に巡り会えたら嬉しいな。

ヨーロッパ在住の日本人によるブログ ONE CLICK PLEASE♪ /クリックお願い致します♪