ARB GUIDANCE EVENINGへ

午前8時過ぎ目が覚め、バナナとヨーグルトの朝食を食べて出勤。快晴で気持ちがいい。9時半到着。本日もレポートの修正に集中する。同時並行してメール、図面の対応、TEKの質問に対する受け答えをする。ランチはTEKと久し振りにTANAKATSUへ。カツ定食的な弁当を外で食べる。TEKもお気に召したようだ。事務所に戻ってからレポートに集中。17時半までにほぼ修正が終わった。明日、SEのレポートを読み通すつもり。17時半過ぎ事務所を出る。

バスに乗ってUCL、BARTLETTの新しい校舎へ。MORNINGTON CRESCENT駅から歩いて少しの場所にある古い建物をUCLが買い取って最近校舎として使い出したようだ。BARTLETT主催のARB GUIDANCE EVENINGに出席した。これは最終的にPART 3 = ARCHITECT、つまり英国で建築家として名乗るために、まずその前段階としてPART 1 & PART 2のQUALIFICATIONを取得したいと思っているNON-RECONGNISED OVEARSEAS QUALIFICATIONを保持した人達の傾向と戦略を学ぶ有料のレクチャーである。さすが有料だけあってしっかりしたレクチャーで非常に為になった。レクチャーの後には過去に合格した人達が自分達のポートフォリオを持って皆に公開してくれた。

彼らのポートフォリオをみて正直なところ今すぐ受験して合格するものでないことが良くわかった。まあでもそれくらい解ってたからワザワザ有料のレクチャーまでこないのだがそれでも落胆してしまう程の難易度である。合格者の大半が半年以上かけて準備をしているようだ。

考えてみれば英国で5年かかってようやく取得できるQUALIFICATIONを書類選考と数時間のインタビューのみでその資格を与えようとするものだから難しいのは当たり前である。

会場には僕よりも年齢が高い人やEU、あるいはEU圏外のアジアやアフリカ、中東からの人達の参加者が多かった。EUにおけるPART 1 & PART 2と同等の教育制度を受けた人であっても他と同様に書類選考、ポートフォリオ審査とインタビューを受けなくてはならない。

実際の試験ではアカデミック / プロフェッショナルを問わず今までに自分が関わってきた建築プロジェクトを自分のポートフォリオとして提出し審査してもらう事になる。その際に心得て置かなければならないのは、自分が受けて来た外国の建築教育を試験官に知ってもらおう、認めてもらおうとするのではなく、如何に自分が受けてきた教育が英国の教育と同等であるかを証明しなくてはならないのだ。そのためのクライテリアは11つ。通称GC = GENERAL CRITERIAといわれ、サブクローズも含めれば33つのクライテリアが用意されており、それら全てにチェックボックスが入らなければ、試験はパスできない。

このクライテリアを読めば自然と日本の建築教育との差が明らかになってくる。レクチャー中にアジア人の女性が手を上げて質問した。「クライテリア3に設けられている、FINE ARTSはどう捉えればよいのですか」という質問だった。GC3はすなわち「建築デザインの質に影響を与える美術知識」とされている。これをパスするには美術理論とその実践、そしてテクニック、美術における創造的な応用と建築に与える効果を知識として持ち合わせている、という事が条件として課されている。

質問されたレクチャラーは「たとえばアート・アンド・クラフト運動とかウィリアム・モリス、DE STIJLとか色んな芸術界でのムーブメントがあって、建築デザインに関連付けて設計してきたでしょう?」という返答をしたがそれはUK、EU、あるいは芸大・文系ベースの建築学科を卒業した人達にしたらそこまで難しい物ではないかもしれない。ただ理工系大学が建築をそのようにアートと関連付けて設計させているとは限らない。そこが難しいところなのである。それを自分の過去のポートフォリオから引っ張りだしてこなくてはならない。

逆にだ、芸大系を卒業したものがGC10の「コスト要因、建築基準法による制限がありながらビルディングユーザーの必要条件をクリアするための必要なデザインスキル」を学生時代の作品を通して証明できるだろうか。

ACADEMIC / PROFESSIONAL、あるいはDRAWING / WRITTEN WORKのコンビネーションでポートフォリオは構成できる。ただプロフェッショナルの作品で全てを構成してはならない。早稲田のカリキュラムは僕が入学した前年の2000年より6年制に移行、UNESCO / UIAが国際的に要求している5年以上の建築教育を必須とする指針に適合している。ただこの英国の建築教育カリキュラムにそれが本当に対応できるかどうか、自分の6年間の経験を振り返っても、、どうも疑問が残る。英国の教育カリキュラムの方が指針が高い。だからARB ( ARCHITECTURAL REGISTRATION BOARD) / 建築家登録委員会は英国以外の資格は認めないのかもしれない。

1人駅前のケバブ屋WOODYでケバブを食べながら戦略を考える。ま、当分無理だということだけが解った。


レクチャーにて。